CACHATTO COLUMNカチャット コラム

ZTNAとは?企業セキュリティを変革する新時代の接続基盤

Facebookアイコン xアイコン

クラウド環境への移行とリモートワークの普及により、従来のVPNベースのセキュリティモデルでは対応しきれない課題が顕在化してきました。これに伴い、VPN接続の帯域制限による業務効率の低下や、「内部は安全」という前提に基づいたセキュリティモデルの脆弱性が、企業のセキュリティリスクを高めています。その解決策として注目を集めているのがZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)です。
本記事では、ZTNAについて基本概念から導入メリット、具体的な実装方法まで解説します。

ZTNAとは?企業セキュリティを変革する新時代の接続基盤

目次

  1. ZTNAとは?
  2. ZTNAが企業にもたらすビジネス価値とセキュリティ強化
  3. ZTNA導入のためのステップと選定基準
  4. データレスクライアント:ZTNA実現のアプローチ
  5. ZTNA導入で実現する次世代セキュリティと企業競争力の強化

ZTNAとは?

VPNとは異なる新しいセキュリティの概念と仕組みを解説します。「内部は安全」という前提を捨て、すべてのアクセスを検証する新たなアプローチです。

ZTNAの基本と考え方

ZTNA(Zero Trust Network Access)は、「決して信頼せず、常に検証する(Never Trust, Always Verify)」という原則に基づいた新しいセキュリティモデルです。従来のVPNが前提としていた「ネットワークの内側は安全」という考え方を根本から見直し、すべてのアクセスを潜在的なリスクとみなします。ZTNAの中核となる考え方は以下の通りです。

  1. アイデンティティベースのアクセス制御

    ネットワークの場所ではなく、ユーザーやデバイスのアイデンティティに基づいてアクセス権を付与します。
  2. 最小権限の原則

    必要最小限のリソースにのみアクセスを許可し、不必要な露出を減らします。
  3. 継続的な認証と認可

    アクセスの許可は一度きりではなく、状況やリスクに応じて継続的に評価されます。
  4. アプリケーション/リソースの非公開化

    必要なユーザーにのみリソースを可視化し、外部からの攻撃対象を最小化します。

この考え方により、ZTNAはリモートワークやクラウド環境において、より柔軟かつ強固なセキュリティモデルを実現します。

ZTNAとVPNの違い

ZTNAとVPNはどちらもリモートアクセスを可能にする技術ですが、その設計思想と実装方法に大きな違いがあります。

アクセス制御の範囲

  • VPN

    ネットワークレベルでのアクセス制御を行います。VPNに接続すると、基本的にネットワーク内のすべてのリソースにアクセス可能となります。
  • ZTNA

    アプリケーションレベルでのアクセス制御を実現します。特定のアプリケーションやサービスごとに細かくアクセス権を管理するため、必要なリソースだけにアクセスを限定できます。

トラフィックの流れ

  • VPN

    すべてのトラフィックが企業ネットワークを経由するため、クラウドサービスへのアクセスも迂回路を通ることになり、パフォーマンスが低下します。
  • ZTNA

    クラウドサービスへの直接アクセスが可能であり、必要なリソースへの最短経路でアクセスできるため、パフォーマンスが向上します。

セキュリティモデル

  • VPN

    境界型セキュリティ(ネットワークの入口で防御する方式)を採用しています。
  • ZTNA

    ゼロトラストセキュリティ(すべてのアクセスを継続的に検証する方式)に基づいています。

ユーザーエクスペリエンス

  • VPN

    接続手順が煩雑で、帯域制限によるパフォーマンス低下が発生することがあります。
  • ZTNA

    シームレスな接続体験と、必要なリソースへの直接アクセスによる高いパフォーマンスを提供します。

これらの違いから、ZTNAはクラウドサービスの利用が一般的となった現代のビジネス環境により適したアクセス制御の手段といえます。企業のDX推進やリモートワーク環境の整備において、ZTNAの特性を活かしたセキュリティ設計が今後ますます重要になるでしょう。

ZTNAが企業にもたらすビジネス価値とセキュリティ強化

ZTNAはセキュリティと利便性を両立し、企業経営に多面的な価値をもたらします。

セキュリティリスクの大幅削減

ZTNAの導入により、多角的にセキュリティリスクを削減できます。企業の業務アプリケーションを直接インターネットに公開せず、認証されたユーザーのみがアクセスできる環境を構築することで、サイバー攻撃の対象となる領域を縮小することが可能です。また、最小権限アクセスの原則により、仮に一部のシステムが侵害されても、攻撃者の横移動を制限し被害の拡大を防ぎます。

ZTNAのもう一つの重要な特徴として、ユーザーとデバイスの継続的な認証とアクセス権の厳密な管理により、不正アクセスによるデータ漏洩リスクも軽減されます。さらに、外部から直接アクセス可能な機器の数を減らすことで、脆弱性管理の負担が軽くなり、セキュリティパッチの適用遅延によるリスクも低減します。

これらの要素が組み合わさることで、特にリモートワーク環境においてセキュリティインシデントの発生率を大幅に減少させる効果が期待できます。

運用コストとパフォーマンスの最適化

ZTNAは企業の運用コストを大幅に削減します。従来のアクセス制御では必須だったVPNゲートウェイやファイアウォールなどの専用ハードウェアの必要性が減少するため、クラウドベースのサービスへの移行がスムーズに進み、インフラ投資を最適化できます。また、集中管理されたポリシー設定と自動化されたアクセス制御により、日常的な運用タスクが簡素化され、IT部門の負荷が軽減されます。

パフォーマンス面では、クラウドベースのZTNAソリューションが企業の成長に応じて柔軟にスケールするため、追加のハードウェア投資なしで事業拡大に対応可能です。さらに、クラウドサービスへの直接アクセスにより不要なトラフィックの迂回を防ぎ、レスポンス速度が向上します。これはエンドユーザーの生産性向上にもつながり、業務効率の全体的な改善に寄与します。

ユーザー体験の向上とビジネス俊敏性

ZTNAは場所を問わず必要なリソースに直接アクセスできるため、リモートワークやハイブリッドワークがスムーズになります。従来のVPNよりも直感的かつ安定したアクセス体験を提供し、企業所有端末だけでなく個人所有デバイス(BYOD)からのセキュアなアクセスも実現するため、働き方の柔軟性が高まります。

新しいクラウドサービスやビジネスアプリケーションの導入においても、ネットワーク再構成の複雑さが軽減され、導入時間が短縮されます。また、物理的なオフィスやネットワークに依存しないアクセスモデルにより、災害時や緊急時のビジネス継続性も確保できます。

このようにZTNAは、セキュリティ強化だけでなく、ユーザー体験とビジネスの俊敏性向上という価値をもたらします。企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる基盤として、今後ますます重要性が高まるでしょう。

ZTNA導入のためのステップと選定基準

スムーズかつ効果的な導入のためのステップと、適切なソリューション選びの重要ポイントをご紹介します。

ZTNA導入準備ステップ

ZTNA導入の第一歩は、現状を正確に把握することから始まります。以下のステップで進めましょう。

  1. 現状のネットワーク・アクセス環境を棚卸しする

    現在利用しているアプリケーションとサービスを一覧化し、ユーザーグループとそのアクセス権限を整理します。VPNなど既存のリモートアクセス手段の利用状況を分析し、現在の課題点を明確にします。
  2. 優先度の高いアプリケーションを特定する

    ビジネスクリティカルなアプリケーション、クラウドサービスとオンプレミスアプリケーションの分類、ユーザー数の多いアプリケーションを特定します。これにより、段階的な移行の際の優先順位が決まります。
  3. セキュリティポリシーを定義する

    アクセス権限の最小化原則に基づいたポリシーを策定し、デバイス状態や場所、時間などのリスクベースのアクセス条件を設定します。継続的な監視と検証のための基準も併せて定めておきます。
  4. 実装範囲と段階的アプローチを計画する

    パイロット導入のスコープを定義し、全社展開のロードマップを作成します。既存環境とZTNAの並行運用期間も設定しておきましょう。

この準備段階では、IT部門だけでなく、経営層やビジネス部門も巻き込み、セキュリティ強化とビジネス効率のバランスを考慮した計画を立てることが重要です。

ZTNAソリューション選定のための評価基準

適切なZTNAソリューションを選ぶために、以下の観点から評価しましょう。

技術的要件の確認

自社で使用している既存アプリケーションやプロトコルに対応しているかを確認することが重要です。また、多要素認証やシングルサインオンなど、必要とする認証方式をしっかりとサポートしているか検証してください。エンドポイントセキュリティの評価機能が十分であるかも確認しましょう。さらに、既存のネットワーク環境との互換性があるかどうかは、スムーズな導入のために欠かせない要素です。

導入・運用の容易さの評価

初期設定の手順が明確で実施しやすいかどうかは、導入期間と初期コストに直結します。また、管理コンソールが直感的で使いやすいことは、日常的な運用効率に大きく影響します。ポリシー設定が柔軟に行えるかも重要なポイントです。加えて、既存のIDシステムと容易に統合できるかどうかは、ユーザー管理の一元化において不可欠な要素となります。

ユーザーエクスペリエンスの検証

アクセスがスムーズで迅速であることは、ユーザーの生産性に直結します。クライアントソフトウェアの操作性がシンプルであれば、ユーザーの抵抗感も少なく導入がスムーズになるでしょう。モバイルデバイスへの対応が充実していることも、多様な働き方をサポートするうえで欠かせません。また、インターネット接続が不安定な環境でも作業できるよう、オフライン作業との親和性についても検討すべきです。

スケーラビリティとパフォーマンスの確認

予想される同時接続ユーザー数に十分対応できる処理能力があるかを確認することが必要です。グローバル展開を視野に入れている場合は、地理的分散環境をサポートしているかも条件となります。システムの安定性を確保するために、高可用性を保証する仕組みがあるかどうかも確認しましょう。また、業務効率に直結するレスポンス時間が許容範囲内であるかも見逃せない評価ポイントです。

コストと投資対効果の算出

初期導入コストと運用コストのバランスが適切であるかを十分に検討する必要があります。ライセンス体系が自社のユーザー規模やニーズに合っているかも検討しましょう。既存インフラへの追加投資がどの程度必要になるのかも事前に把握しておくべきです。そして、期待されるセキュリティ向上や効率化によるROI(投資対効果)が十分であるかを算出し、経営層への説得材料として準備しておくことも大切です。

ベンダーの信頼性とサポート体制の評価

市場での実績と導入事例が十分にあるかを確認することで、ソリューションの安定性を判断できます。テクニカルサポートの質と対応時間が満足できるレベルであるかも、運用時の安心感につながります。製品の将来的なロードマップが明確であれば、長期的な投資としての妥当性を評価できます。また、日本国内での導入を考える場合は、日本語対応が充実しているかどうかもスムーズな導入と運用のために必ず確認すべき事項です。

これらの評価基準を自社の優先順位に合わせて重み付けし、複数のソリューションを比較検討することで、最適な選択が可能になります。

段階的な実装と評価のステップ

ZTNAの導入は段階的に進めることで、リスクを最小化しながら成功率を高められます。以下のステップに沿って進めましょう。

  1. パイロット導入を実施する

    IT部門など限られたユーザーグループと特定のアプリケーションで試験導入を行い、ユーザーフィードバックを収集して問題点を特定します。運用手順の確立とドキュメント整備も並行して進めます。
  2. 評価と最適化を行う

    パイロット結果に基づきセキュリティポリシーを調整し、パフォーマンス、ユーザー体験、セキュリティ効果を評価して必要な改善を加えます。運用プロセスも効率化します。
  3. 段階的な展開を進める

    部門別または機能別に計画的なロールアウトを実施し、ユーザー教育とサポート体制を整備しながら既存環境からの移行を進めます。進捗とセキュリティメトリクスを継続的に測定します。
  4. 全社展開と継続的改善を実施する

    全社的な利用を拡大し、定期的なポリシー見直しと最適化を行いながら、新たなアプリケーションも順次追加していきます。セキュリティ態勢の継続的な改善を行います。

この段階的アプローチにより、組織やユーザーの適応時間を確保しながら課題を早期発見・解決し、変化するビジネス環境やセキュリティ要件に柔軟に対応できるZTNA環境を構築できます。

データレスクライアント:ZTNA実現のアプローチ

ZTNAの実現方法としては様々なアプローチがありますが、その中でも特に注目されているのが「データレスクライアント」です。従来のネットワークセキュリティに加えて、エンドポイント側でのデータ保護を強化することで、より包括的なゼロトラストの実装が可能になります。

データレスクライアントの基本的な仕組み

データレスクライアントは、端末内にデータを残さない(または最小限に抑える)技術的アプローチです。端末内に暗号化された隔離領域(コンテナ)を作成し、その中でのみ業務を行うことで、セキュリティを確保する仕組みです。

具体的には、ユーザーが業務アプリケーションを起動すると、通常のOSとは分離された安全な仮想環境が生成され、すべての業務処理はこの環境内で完結します。データの保存や編集はすべてこの隔離領域内で行われ、業務終了時には環境自体が削除されるため、端末上に業務データの痕跡が残りません。
これにより、万が一端末が紛失や盗難に遭っても、重要な業務データが漏洩するリスクを大幅に低減できます。

データレスクライアントについては、次の記事も参考にしてください。

関連記事 データレスクライアントとは?仕組みやVDIとの違い、メリット・デメリットを解説

データレスクライアントとは?仕組みやVDIとの違い、メリット・デメリットを解説

ZTNAとデータレスクライアントの関連性

データレスクライアントアプローチは、ZTNAの核心的な原則と非常に相性が良く、効果的な実装方法の一つとして注目されています。

「決して信頼せず、常に検証する」原則の実践

ZTNAの基本理念である「Never Trust, Always Verify」を端末側から実現します。データレスクライアントでは、アクセス時の認証だけでなく、処理中のデータも保護された環境内に閉じ込めることで、継続的な保護を実現します。

アプリケーション単位のアクセス制御との親和性

ZTNAではネットワーク全体ではなく、特定のアプリケーションやリソースへのアクセスを個別に制御します。データレスクライアントはこの考え方を拡張し、必要なアプリケーションのみをセキュアコンテナ内で利用可能にすることで、より細かな制御を実現します。

最小権限の原則の強化

ZTNAは必要最小限のアクセス権のみを付与する原則を重視します。データレスクライアントはこれを端末側で補完し、データの取り扱いも最小権限の原則に従って制限します。コピー&ペーストの制御や印刷制限などの機能により、データ流出リスクをさらに低減します。

クラウドサービスとの親和性

クラウドサービスへの直接アクセスを可能にするZTNAの特性と、データレスクライアントのコンテナ型アプローチは高い親和性を持ちます。クラウドアプリケーションへの安全なアクセスとデータ保護を同時に実現できます。

このように、データレスクライアントはZTNAの概念を端末側で強化する実装方法として、特に機密性の高いデータを扱う業界や規制要件の厳しい環境において有効な選択肢となります。ZTNAの「ネットワークアクセス制御」とデータレスクライアントの「端末データ保護」を組み合わせることで、より包括的なセキュリティモデルを構築できます。

ZTNA導入で実現する次世代セキュリティと企業競争力の強化

ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)は、「すべてを信頼せず、常に検証する」という原則に基づく次世代のセキュリティアプローチです。従来のVPNが抱える様々な課題を解決し、クラウド時代に適したセキュリティモデルを提供します。

ZTNAの導入により、企業はセキュリティリスクの大幅な低減と運用コストの最適化を実現できるだけでなく、ユーザー体験の向上とビジネス俊敏性の強化も図ることができます。実装方法としては、特にデータレスクライアントが、シンプルな導入・運用と強固なセキュリティを両立する有力な選択肢として注目されています。

例えば、データレスクライアントである「セキュアコンテナ」では、隔離されたセキュアな業務領域を生成し、その中でのみ業務を行うことができるため、端末内に業務データを残すことなく、高度なセキュリティを実現します。業務終了時にはその領域を削除するため、MDMの導入やリモートワイプを使用せずとも、万が一端末の紛失や盗難が発生した場合でも、重要なデータを失う心配がありません。さらに、スマートフォンやタブレットからのセキュアブラウザによる作業にも対応しているため、多様な働き方にも柔軟に対応できます。

セキュアコンテナ|データレスクライアント

CACHATTO Oneに関する資料請求やお問い合わせはこちら。
お気軽にお問い合わせください!

リモートアクセスや製品に関する
お役立ち資料をご用意しています。

お役立ち資料 お役立ち資料ダウンロード

リモートアクセスや製品に関する
様々なご質問にお答えします。

お問い合わせ メールでお問い合わせ
記事一覧に戻る