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脱VPNとは?企業のセキュリティ課題を解決する新時代のアプローチ

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クラウドサービスの利用拡大やリモートワークの定着により、企業のIT環境は大きく変化しています。それに伴い、従来のVPNによるアクセス制御やセキュリティ対策にも様々な課題が浮き彫りになってきました。特に従業員1000人以上の企業では、VPNの運用管理コストが高くなることもあり、セキュリティ強化と運用効率の両立が喫緊の経営課題となっています。
本記事では、「脱VPN」について、その背景から具体的な実装方法、さらには次世代のソリューションまでを解説します。セキュリティ体制の見直しを検討されている企業の担当者様に、選択肢とその評価基準を提案します。

脱VPNとは?企業のセキュリティ課題を解決する新時代のアプローチ

目次

  1. VPNが抱える構造的な課題とその影響
  2. 「脱VPN」が注目される背景と本質的な意味
  3. 次世代型セキュリティアプローチの選択肢
  4. データレスクライアントによる脱VPNの実現方法
  5. VPNからの移行で実現する、新たなセキュリティ基盤

VPNが抱える構造的な課題とその影響

クラウド時代において顕在化する従来型アクセス制御の限界と、その運用が企業にもたらす様々なリスクについて解説します。

従来型VPNの仕組みと限界点

VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的なプライベートネットワークを構築し、暗号化された安全な通信経路を確保する技術として広く普及してきました。しかし、クラウドサービスの普及と分散型の働き方が一般化する中で、従来型VPNには複数の構造的な課題が明らかになっています。

最も大きな課題は、「社内ネットワークを前提とした設計」です。VPNは企業の内部ネットワークへの入り口として機能しますが、これは同時にすべてのトラフィックを一箇所に集中させることを意味します。クラウドサービスへのアクセスであっても、一度社内ネットワークを経由する必要があるため、不要な通信の迂回が発生し、レスポンスの低下を招きます。

また、VPNは接続さえ確立できれば、原則としてネットワーク内のすべてのリソースにアクセスできる「城壁型セキュリティ」の考え方に基づいています。これは、内部への侵入を許してしまった場合のリスクが極めて高いことを意味します。

増加するVPN関連のセキュリティインシデント

昨今増加しているランサムウェア攻撃において、VPN機器の脆弱性を起点とした侵入が最も多い経路とする調査結果もあります。特に問題となっているのは、以下の三つのケースです。

  • VPNの認証情報の漏洩による不正アクセス
  • パッチ未適用の脆弱性を狙った攻撃
  • VPN機器自体のセキュリティホールを利用した侵入

これらの攻撃は、一度成功すると企業ネットワーク全体に影響が及ぶ可能性があり、データ漏洩やランサムウェア感染などの深刻なインシデントにつながりやすい特徴があります。

コスト面から見るVPN運用の問題点

VPNの運用には、金銭的なコストだけでなく、運用負荷や業務効率の面でも大きな負担が発生します。これらの負担は、企業活動に様々な形で影響を及ぼしています。

  1. インフラストラクチャコスト

    • VPNゲートウェイの導入・更新費用
    • ライセンス料金
    • 帯域増強に伴うネットワーク機器の増設
  2. 運用管理コスト

    • 24時間365日の監視体制の維持
    • セキュリティパッチの適用作業
    • ユーザーアカウント管理
    • トラブル対応の人件費
  3. パフォーマンス関連の隠れたコスト

    • 通信遅延による業務効率の低下
    • VPN接続のトラブル対応時間
    • 帯域制限によるクラウドサービス利用の制限

特に大規模な企業では、これらの負担が業務効率の低下や管理工数の増大につながり、企業の競争力に影響を与える可能性があります。

※出典:中小企業向けサイバーセキュリティ実践ハンドブック:中小企業も安心!セキュリティ対策でDXを加速(東京都産業労働局)

「脱VPN」が注目される背景と本質的な意味

VPNの課題を踏まえ、多くの企業がなぜ「脱VPN」へと舵を切るのか、その背景にあるビジネス環境の変化とセキュリティ概念の進化について解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)における位置づけ

企業のDXが加速する中、従来のインフラ環境は大きな転換点を迎えています。クラウドサービスの活用が一般化し、業務アプリケーションの多くがSaaS型へと移行する中、「社内」と「社外」という従来の境界は急速に曖昧になってきました。

このような環境変化において、VPNによる「社内ネットワークへの入り口」という考え方は、むしろビジネスの俊敏性を妨げる要因となっています。社内のデータセンターを経由する必要があるVPNでは、クラウドサービスへの直接アクセスが制限され、新しいワークスタイルやビジネスモデルへの対応が困難になるためです。

ゼロトラストセキュリティとの関係性

「脱VPN」の本質は、従来の境界型セキュリティからの脱却にあります。これは、ゼロトラストセキュリティの考え方と密接に結びついています。ゼロトラストでは、「信頼できる内部ネットワーク」という概念自体を見直し、すべてのアクセスを検証対象とします。具体的には以下のような変化をもたらします。

アクセス制御の考え方

従来方式:ネットワークへの入口で認証
ゼロトラスト方式:各リソースへのアクセスごとに認証

セキュリティの範囲

従来方式:社内ネットワーク全体を防御
ゼロトラスト方式:データやアプリケーション単位での防御

ユーザー体験

従来方式:VPN接続が必要
ゼロトラスト方式:必要なリソースへ直接アクセス

ゼロトラストについては、次の記事も参考にしてください。

関連記事 ゼロトラストとは?メリットやデメリット、実現するためのポイントを紹介

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次世代型セキュリティアプローチの選択肢

脱VPNを実現するための具体的な方法論として、ゼロトラストに基づく新たなセキュリティアプローチの特徴と選定基準を紹介します。

ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)の特徴

ZTNAは、「Never Trust, Always Verify(決して信頼せず、常に検証する)」という原則に基づいたアクセス制御を実現します。その主な特徴は次の通りです。

まず、コンテキストベースのアクセス制御により、ユーザーの属性、デバイスの状態、アクセス元の場所、時間帯などの要素を総合的に評価し、アクセスの可否を判断します。これにより、より柔軟かつ堅牢なセキュリティ制御が可能になります。

次に、マイクロセグメンテーションの採用により、リソースごとに細かなアクセス制御を行い、必要最小限の権限のみを付与します。これにより、侵害が発生した場合の影響範囲を最小限に抑えることができます。

さらに、継続的な監視と評価の仕組みにより、セッション確立後もアクセスの妥当性を継続的に評価します。不審な挙動が検出された場合は、即座にアクセスを遮断することができます。

次世代型セキュリティ導入の選定基準

次世代型セキュリティソリューションを選定する際は、以下の観点から評価することが重要です。

  1. 導入・運用のしやすさ

    • 既存システムとの親和性
    • 管理機能の充実度
    • 運用に必要なスキルセット
  2. セキュリティ機能

    • 認証方式の強度
    • アクセス制御の粒度
    • ログ管理・監視機能
  3. ユーザビリティ

    • アクセス時の操作性
    • レスポンス速度
    • モバイル対応状況

次世代型セキュリティアプローチへの移行は、単に「脱VPN」を実現するだけでなく、企業のセキュリティレベルを向上させながらも、ユーザーの利便性を損なわない仕組みが求められます。ZTNAのような概念に基づいたセキュリティ対策を、適切な導入と運用方法で実装することにより、バランスの取れたセキュリティ体制の構築が可能になります。

データレスクライアントによる脱VPNの実現方法

ゼロトラスト実現の具体的手段として、データレスクライアントによるアプローチを紹介し、その構成や従来のVPNからの移行手順を解説します。

システム構成と運用の特徴

データレスクライアントは、端末内にセキュアな業務領域を作り出すことで、新しいアプローチのセキュリティを実現します。その中核となるのが、セキュアコンテナ方式です。この方式では、業務用の隔離領域を動的に作成し、個人領域と業務領域を完全に分離します。これにより、業務データの外部保存や不正な転送を確実に防止することが可能となります。

また、システム構成面での大きな特徴は、その導入・運用のシンプルさにあります。エージェントをインストールするだけで利用を開始でき、サーバー側での複雑な設定作業が不要です。このシンプルな構成により、クラウドサービスとの親和性も高く、既存の業務環境との統合もスムーズに進めることができます。

データレスクライアントについては、次の記事も参考にしてください。

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従来型VPNからの具体的な移行手順

データレスクライアントへの移行は、以下のステップで進めることがお勧めです。

  1. 現状分析とスコープ定義

    移行の第一歩として、現在のVPN環境がどのように利用されているかを詳細に把握する必要があります。具体的には、既存システムの利用状況を確認し、移行対象となるシステムの優先順位付けを行います。同時に、新しい環境に求められるセキュリティ要件を整理し、移行後の目標像を明確にしていきます。
  2. パイロット導入とテスト

    実際の移行に先立ち、限定されたユーザーグループでの検証を実施します。この段階では、実際の業務での使用感を確認しながら、運用フローの妥当性を検証します。また、発生した課題を早期に特定し、本格展開前に必要な対策を講じることで、円滑な移行を実現します。
  3. 段階的な展開

    全社展開では、部門ごとに計画的な移行スケジュールを立て、段階的に導入を進めていきます。各段階で必要なユーザー教育を実施し、新しいシステムへの理解を深めることで、スムーズな移行を実現します。また、移行状況を継続的にモニタリングすることで、必要に応じて計画の調整を行います。

このように、データレスクライアントは端末内のセキュアコンテナでデータを保護しながら、シンプルな導入と運用の両立を実現します。移行においては、現状把握から段階的な展開まで、計画的なアプローチが重要となりますが、適切に実施することで、セキュリティを強化しながらも利便性を損なうことなく、従来のVPN環境からの脱却が可能になります。

VPNからの移行で実現する、新たなセキュリティ基盤

VPNからの脱却は、単なるインフラの変更ではなく、企業のセキュリティ戦略の根本的な見直しを意味します。特に、データレスクライアントによるアプローチは、セキュリティの強化とコスト最適化、さらにはユーザー体験の向上を同時に実現できる有力な選択肢といえます。このアプローチにより、従来のような場所や時間の制約から解放され、より柔軟な業務環境の構築が可能となります。

このような次世代型セキュリティの実現において、データレスクライアントソリューションの「セキュアコンテナ」は、端末内に隔離された業務専用の安全な領域を生成します。この領域内でのみ業務を行うことで、端末内に業務データを一切残さない「真のデータレス環境」を実現します。業務終了時には領域が自動的に削除されるため、MDMの導入やリモートワイプといった追加的なセキュリティ対策も不要となります。また、PCだけでなくスマートフォンやタブレットにも対応しているため、場所やデバイスを問わない柔軟な働き方を実現できます。

企業のデジタル環境が日々変化する中、セキュリティ対策も進化が求められています。まずは自社の現状を適切に評価し、次世代型セキュリティソリューションへの段階的な移行を検討してみてはいかがでしょうか。

セキュアコンテナ|データレスクライアント

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