ハイブリッドクラウドとは?メリット・デメリットや導入に向いている企業を紹介
2023.06.22投稿、2023.06.22更新
最近は、クラウドサービスやオンプレミスのどちらか1つの環境だけを選択するのではなく、さまざまな環境を組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」を利用する企業が増えています。ハイブリッドクラウドには、セキュリティ強化、コスト最適化などのさまざまなメリットがあるからです。これからクラウドサービスを導入する、またはシステムの移行を考えているなら、ハイブリッドクラウドも有力な選択肢になるでしょう。ハイブリッドクラウドを導入・運用するなら、それぞれの環境について知識のある人材が必要です。
ここでは、ハイブリッドクラウドの概要と、メリット・デメリット、ハイブリッドクラウドに向いている企業について紹介します。
ハイブリッドクラウドとは
ハイブリッドクラウドとは、複数のタイプのクラウドサービスを組み合わせたり、物理サーバーとクラウド環境を組み合わせたりして構築したシステムのことです。ハイブリッドクラウドなら、それぞれのコンピューティング環境のメリットを生かして互いのデメリットを補い、課題を解決することができます。
また、目的によって環境を使い分けることで、コストの最適化や状況に合わせたスケーリングも可能です。
ハイブリッドクラウドで利用するサーバー
ハイブリッドクラウドで利用するサーバーには、大きく分けて以下の3種類があります。
- プライベートクラウド
クラウドサービス上に専用のサーバーや回線、システム環境を用意したものです。サーバーのみをレンタルするホスティング型と、環境すべてを占有するオンプレミス型があります。
ほかのユーザーと環境を共有しないので、セキュリティ対策やカスタマイズ性の高い環境です。その代わり、比較的導入するコストは高めです。
- パブリッククラウド
サーバーや回線などをほかのユーザーと共有するコンピューティング環境です。
ほかのユーザーと環境を共有するため、カスタマイズの余地は低いです。また、トラブルが発生してもクラウドサービスに対応を一任することになります。一方で、コストを抑えられ、短期間で導入できます。
- 物理サーバー
オンプレミスともいいます。クラウド上ではなく、社内にサーバーや回線などを用意します。環境は自社で占有することができ、セキュリティ対策やカスタマイズも自由です。
ただし初期コストが高く、運用管理の手間もかかります。
ハイブリッドクラウドは、これらの環境から2種類以上を必要に応じて組み合わせて構築します。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違い
ハイブリッドクラウドと似た言葉に「マルチクラウド」があります。マルチクラウドとは、複数の異なる事業者のクラウドサービスを利用することです。
ハイブリッドクラウドとマルチクラウドの違いは、以下のように説明できます。
- ハイブリッドクラウド
プライベートクラウド、パブリッククラウドなどの、異なるコンピューティング環境を組み合わせて1つのシステムを構築することです。
複数の環境を組み合わせて、統合されたシステムを構築します。
- マルチクラウド
AWS(Amazon Web Service)、Microsoft Azureなどの、異なるクラウドサービスから提供されるコンピューティング環境を併用することです。
それぞれのクラウドサービスは独立して利用され、統合されてはいません。
ハイブリッドクラウドが注目されている背景
クラウドサービスが普及し、さまざまなサービスがクラウド上で提供されるようになりました。 ITインフラ環境のみを提供するIaaSや、IaaSに加えて開発環境(プラットフォーム)まで提供するPaaS、PaaSに加えてアプリケーションまで提供するSaaSなどがあります。
それに伴い、ユーザー企業側からもメール、ストレージ、業務システムなどを、必要に応じて使い分けたいという要望が出るようになりました。
しかし、1種類のクラウドサービスで業務のすべてをまかなえないユーザーもいます。メールはGmail、業務システムはMicrosoft Azureなど、それぞれに合わせた環境を利用したいという要望があるためです。
そのため、さまざまな環境を使い分けて、より快適かつ効率的な作業環境と業務システムを構築するハイブリッドクラウドが注目されています。
ハイブリッドクラウドの市場規模は拡大中
ハイブリッドクラウドの市場規模は世界的に拡大しています。株式会社グローバルインフォメーションが提供する海外市場調査レポートによると、世界のハイブリッドクラウドの市場規模は、2021年の853億米ドルから2027年には2,624億米ドルに達し、19.63%成長すると予測されているのです。
引用元:「市場調査レポート: ハイブリッドクラウドの世界市場:業界動向、シェア、規模、成長、機会、予測(2022年~2027年)」株式会社グローバルインフォメーション
ハイブリッドクラウドのメリット・デメリット
ハイブリッドクラウドには、複数の環境を組み合わせることによるメリットとデメリットがあります。
ハイブリッドクラウドのメリット
- 安定稼働
複数の環境を使い分けることで、システムの負荷やセキュリティリスクを分散します。
- トラブル発生時の被害を最小限に抑える
1つの環境でトラブルが発生しても、ほかの環境には被害はおよびません。
- コスト最適化
環境を使い分けることで、コストを最適化できます。
例えば、コストの高いプライベートクラウドや物理サーバーでは機密性が高いデータやシステムを運用し、比較的機密性の低いものはコストの低いパブリッククラウドを利用できます。
- 要件・用途に合わせた柔軟な運用
要件に合わせて環境を使い分けることで、柔軟な運用が可能になります。
例えば、仕様を変更しにくいプライベートクラウドや物理サーバーでは容量の変動しにくいシステムを運用し、アクセス容量が変化しやすいシステムはパブリッククラウドで運用することも可能です。
- 既存のSaaSを取り入れることによるスピーディーな開発
パブリッククラウドでSaaSとして提供されているシステムやサービスを利用することで、スピーディーな開発と運用が可能です。プライベートクラウドや物理サーバーでシステムを開発・運用するには、ある程度の時間がかかります。
ハイブリッドクラウドのデメリット
- 管理が複雑
複数の環境を組み合わせることでシステム構成が複雑になるため、管理も複雑になります。スムーズに運用するには、さまざまな環境に対する知識が必要です。
- 高いスキルを持つ人材が必要
管理が複雑になるため、それぞれの環境やネットワーク、セキュリティ、業務などに関して、幅広い知識と高いスキルを持つ人材が必要になります。
ハイブリッドクラウドはどんな企業に向いているか
ハイブリッドクラウドは、組み合わせ方を変えることで自社に合わせてカスタマイズできるので、大抵の企業に向いています。そのなかでも、次のような企業には特にハイブリッドクラウドがおすすめです。
- データサーバーをシステムと別にして安全性を確保したい企業
- 動作や応答時間などに細かい規制や条件があり、要件が厳しいシステムが必要な企業
- システム規模の変更が頻繁に行われる企業
一方で、次のような企業では、無理にハイブリッドクラウドを導入する必要はありません。
- 現在オンプレミスやプライベートクラウドなど単体の環境でシステムを構築しており、運用上問題がなく、業務も十分に回っている企業
- データ量が少なく、これからも増えないので、アクセス容量の変化を考える必要はない企業
ハイブリッドクラウドの導入例
ハイブリッドクラウドでは、次のように環境を使い分けることができます。
- システムとデータで環境を使い分ける
システムは、パブリッククラウド上でSaaSとして提供されるサービスを導入します。スピーディーに導入でき、運用管理の必要も少なく、安定稼働が可能です。
ただし、データは機密性が高いため、社内の物理サーバーに置きます。
- アクセス容量で環境を使い分ける
アクセス量が増減しやすいシステム、例えばキャンペーン時に一時的にアクセスが激増するといった場合はパブリッククラウドで提供されるサービスを使います。
一方で、常時一定レベルで稼働する業務システムは物理サーバーに置きます。
- クラウドサービスへの移行をサポートする
パブリッククラウドは、クラウドサービスへの移行の際にも有効です。例えば、物理サーバーからプライベートクラウドやパブリッククラウドにシステムを移行するときには、パブリッククラウドをストレージとして利用します。
それによって、サービスを中断せずに移行することが可能です。
ハイブリッドクラウドの利用には安全な接続が重要
ハイブリッドクラウドは、企業規模を問わず導入が可能で、セキュリティの強化やコストの最適化など、さまざまなメリットがあります。しかし、ハイブリッドクラウドをどのような構成にするか、それぞれをどう運用するかなど、さまざまな環境に対する知見やスキルを持つ人材が必要です。導入前には構成についてよく検討する必要があります。また、ハイブリッドクラウドを安全に利用するためには、さまざまな環境に対して安全な接続を確立することが必要です。最近はテレワークも普及しており、端末の環境も多様なので、より注意しなくてはなりません。
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