リモートアクセスについては、以下の資料もご参照ください。リモートアクセス方式の種類や各仕組み、メリット・デメリットを図解でわかりやすく解説しています。
現在、企業の働き方は大きな転換期を迎えています。新型コロナウイルスの影響で広まった完全テレワークから、出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」へのシフトが加速しており、多くの企業がこの柔軟な勤務形態を採用しています 。
一部では出社回帰の動きも見られますが、多くの企業では「週2-3日は出社、残りはリモート」といったハイブリッド型の働き方が新たなスタンダードとして定着しつつあります。
この新しい働き方を実現する上で欠かせないのが「リモートアクセス」技術です。自宅やサテライトオフィス、外出先など、場所を選ばずに社内システムへ安全にアクセスできる環境は、もはやビジネスの必須インフラとなっています。
本記事では、ハイブリッドワーク時代に求められるリモートアクセスの基礎知識から、代表的な接続方式の特徴、そして自社に最適な方法の選び方まで解説します。
目次
リモートアクセスとは、手元の端末からネットワークを経由して、遠隔地にある業務リソースや社内のPCにアクセスすることです。この方法を用いて、自宅や出張先、営業現場などからオフィスのサーバーやPCにアクセスできます。
リモートアクセスと似た言葉に「リモートデスクトップ」があります。
両者は語感が似ていますが、定義は異なります。
社外から社内ネットワークやシステムに接続する技術全体を指す「広い概念」です。自宅や外出先からインターネット経由で社内のデータにアクセスし、操作することを意味します。実現方法にはいくつかの種類があります。
リモートアクセスを実現する「方法の一つ」です。社内のPCを遠隔操作し、その画面・マウス・キーボードの情報を手元の端末に転送する仕組みを指します。ユーザーは自分の端末から社内PCを操作しているように使え、ファイルの閲覧や編集が可能です。
重要なのは、リモートデスクトップでは手元の端末にデータを保存しない方式が多いことです。これにより、端末の紛失や盗難による情報漏洩リスクを軽減できます。
つまり、「リモートアクセス」は目的や概念を示す言葉で、「リモートデスクトップ」はその実現手段の一つという関係です。
リモートデスクトップについて詳しくは、以下の記事や資料もご覧ください。
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リモートアクセスは多様な働き方を支える技術として、以下のような場面で活用されています。
多くの企業で採用されている「週2-3日は在宅勤務」というスタイルでは、出社日とリモート日で業務の流れが途切れないことが重要です。リモートアクセスがあれば、前日オフィスで作業していた資料の続きを自宅でスムーズに進められ、翌日の出社時も滞りなく業務を継続できます。
自宅以外の第三の場所で働く「サードプレイスワーク」も広がっています。サテライトオフィスやコワーキングスペースから社内システムにリモートアクセスすることで、本社オフィスと同じセキュリティレベルを保ちながら、自宅では難しい集中作業や会議への参加が可能になります。地方在住の従業員も、移動のコストや時間をかけずに都心の本社と同じ環境で業務を進められます。
外回りの多い営業担当者が、訪問先で顧客から質問を受けた際、その場で社内システムにアクセスして正確な情報を提供できます。移動時間も有効活用でき、業務効率が大幅に向上します。
災害やパンデミックなど、予期せぬ事態で出社が困難になった場合でも、リモートアクセス環境が整っていれば、従業員は自宅から社内サーバーやシステムに即座にアクセスでき、通常業務を継続できます。承認作業、顧客対応、データ処理など、オフィスでしか行えなかった業務も滞りなく遂行でき、事業継続性を確保できます。
時間や場所の制約がある従業員にとって、リモートアクセスは働き続けるための生命線です。子どもの急な発熱で保育園から呼び出しがあった場合でも、自宅から社内システムにアクセスして会議に参加したり、期限のある業務を進めたりできます。親の通院付き添いなどの突発的な事態でも、キャリアを中断することなく仕事を続けられます。
企業がリモートアクセスを実現する場合のメリットを、企業側、利用する従業員側に分けて紹介します。
リモートアクセスを実現することで、企業には次のようなメリットがあります。
リモートアクセスが可能になれば、外回りが多い従業員が外出先で業務を行ったり、通勤時間を削減してその分業務に充てたりすることが可能です。そこから業務効率化につながります。
出社しなくてもオフィスと同じ環境で業務ができるため、育児や介護などの事情で出社が難しい従業員も、キャリアを継続しながら働くことができます。このような勤務形態の多様化は、働き方改革の実現に直結します。
特に現在、求職者の多くが「柔軟な働き方ができるか」を企業選びの重要な基準としています。リモートアクセス環境を整備し、ハイブリッドワークを選択できる企業は、優秀な人材の獲得と定着において大きなアドバンテージを持つことにもなります。
出社する従業員数が減少すれば、交通費の削減、オフィス面積の縮小化、従業員用に準備する端末数の削減、郊外・地方へのオフィス移転なども実現可能です。オフィスにかかるコスト削減につながります。
ハイブリッドワークの導入により、全員が同時に出社しないフリーアドレス制を採用する企業も増えており、オフィススペースの最適化が進んでいます。
リモートアクセスが可能になれば、自宅で作業するときもオフィスから端末や記憶媒体を持ち出す必要はなくなります。それによって情報漏洩の防止につながります。
災害やパンデミックが発生してもオフィスに出社する必要がないので、従業員の安全を確保できます。また、データがクラウドサーバーにあれば、オフィスが災害に遭ってもデータは保存可能です。
BCP対策については、以下の記事をご覧ください。
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リモートアクセスを実現することで、従業員には次のようなメリットがあります。
リモートアクセスにより、自宅やコワーキングスペースでも業務が可能になります。これは自由な働き方や働き方改革の実現にもつながります。
外出先や自宅からでも業務が可能になり、通勤時間を削減できます。また、移動中の隙間時間にも業務が可能なため、時間を有効に使うことが可能です。
通勤時間の削減は、ワークライフバランスの改善だけでなく、従業員のウェルビーイング(心身の健康)向上にも大きく貢献します。ストレス軽減や家族との時間確保など、生活の質が向上することで、長期的には生産性や離職率の改善にもつながります。
私物の端末を使うことが可能なら、使い慣れた端末で仕事ができるようになります。 個人の端末を業務利用する場合は、セキュリティ対策やルール整備が重要になります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
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リモートアクセスは多くのメリットがある一方で、導入にあたっては適切な対策が必要な課題も存在します。ここでは主な課題と、それぞれの対策方法を解説します。
リモートアクセスでは、インターネット経由で社内ネットワークにアクセスするため、不正アクセスや情報漏洩などのセキュリティリスクが高まります。特にハイブリッドワーク環境では、オフィス・自宅・外出先など複数の場所からアクセスするため、攻撃の入口が増えることになります。
ハイブリッドワーク環境では、「社内ネットワークは安全」という従来の前提が通用しません。ゼロトラストセキュリティの考え方に基づき、どこからのアクセスであっても毎回検証する仕組みが求められます。
リモートアクセス環境の構築には、サーバーやネットワーク機器の増設、ソフトウェアライセンスの購入など、初期コストがかかります。また、運用開始後もメンテナンスやアップデート費用が継続的に発生します。
段階的な導入でリスクを分散し、費用対効果を見極めながら進めることが重要です。
多くの従業員が同時にリモートアクセスを行うと、回線が混雑し動作速度が低下します。特にハイブリッドワークでは「全員が同じ曜日にリモート勤務」といった偏りが生じやすく、特定の時間帯に負荷が集中する可能性があります。
事前に通信環境を整備し、利用状況を考慮した運用ルールを設けることが効果的です。
リモートワークでは従業員の働きぶりが見えにくく、従来の「オフィスにいる時間」を基準とした評価方法では適切に評価できません。特にハイブリッドワーク環境では、出社している従業員とリモート勤務の従業員が混在するため、公平な評価制度の構築がより重要になります。
成果主義への移行と、新しいコミュニケーション方法の確立が求められます。
リモートアクセスには複数の接続方式があり、それぞれ仕組みやメリット・デメリットが異なります。代表的な接続方式は、次の4種類です。
以下、それぞれの特徴を詳しく解説します。
VPNは「Virtual Private Network」の略称で、インターネット上に仮想のプライベートネットワークを構築し、安全な通信を実現する接続方式です。あらかじめ認証されたユーザー以外は使用できないため、安全性が高い方法といえます。オフィスにいるような感覚で業務を行うことができ、テレワーク端末上にデータの保存も可能です。
実際に専用線を引く場合とは異なり、距離が離れていても手軽に実現できます。ただし、リモートアクセスサーバー(RAS)、つまり、社外から社内ネットワークに接続するための中継サーバーの構築が必要です。
仕組みとしては、安全な通信を実現するため、次の4つの技術が使われています。
VPN方式については、次の記事もご覧ください。
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テレワーク端末からオフィスのデスクトップ環境に接続して遠隔操作する方法です。専用ネットワークの構築が不要で、比較的手軽に導入できることから、多くの企業で採用されています。
仕組みとしては、リモートデスクトップ方式での接続を実現するツールを利用します。利用するツールには、次のようなものがあります。
リモートデスクトップについては、以下の記事をご覧ください。
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不正アクセスや情報漏洩防止対策を強化し、「セキュアブラウザ」を利用する方法です。
セキュアブラウザとは、通常のWebブラウザとは異なる機能を持ち、セキュリティ機能に特化したブラウザのことです。
仕組みとしては、手元の端末からセキュアブラウザを経由して社内システムやクラウドサービスにアクセスし、業務を行います。セキュアブラウザを通すことでフィルタリングを行い、安全性を確保できます。
クラウドサーバー上で提供されているアプリケーションにアクセスして業務を行う方法です。
仕組みとしては、手元の端末から社内ネットワークではなく、インターネット上のクラウドサービスに直接接続します。クラウドサービスのAPIを利用して、社外から直接アプリケーションにアクセスし、利用できます。
リモートアクセスツールの種類については、次の記事もご覧ください。
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リモートアクセスを導入する際の基本的な手順と、ハイブリッドワーク環境で特に注意すべきポイントを解説します。
まず、自社のハイブリッドワーク方針を明確にします。「週何日リモート可能か」「職種による違いはあるか」「出社が必須の業務は何か」などを整理した上で、それに適した接続方式を選定します。
接続方式はそれぞれ特性が異なるため、「どの業務に使うか」によって最適な方法が変わります。
場合によっては、複数の接続方式を併用することも検討しましょう。
選定した接続方式を実現するツールやサービスを比較検討します。
カタログスペックだけで判断せず、可能な限り無料トライアルやデモ版を活用して、実際の使用感を確認しましょう。特に以下の点をチェックすることをおすすめします。
複数の候補を実際に試した上で、従業員の意見も取り入れながら最終決定することで、導入後の不満を減らせます。
技術的な準備と、従業員向けの準備の両方が必要です。
技術的な準備だけでなく、運用ルールの明確化も重要です。
曖昧なルールは混乱を招くため、明文化して全従業員に周知しましょう。
全社一斉導入ではなく、限定的な範囲で開始します。この段階で問題点を洗い出し、改善することが重要です。
具体的には、特定部署(営業部門や総務部門など)やITリテラシーが高い従業員グループから始め、1-2ヶ月程度の期間を区切って効果測定を行います。
いきなり全社導入すると、予期せぬトラブルが発生した際に業務全体が停止するリスクがあります。スモールスタートで問題を早期発見し、改善してから展開することで、スムーズな導入が可能になります。
試験導入の参加者から積極的にフィードバックを集め、改善を反映した上で全社へ展開します。
導入して終わりではなく、定期的に利用状況を確認し、改善を続けることが重要です。
ハイブリッドワークは働き方の選択肢を広げる一方で、適切な運用がなければ効果を発揮できません。導入後も継続的に見直しを行い、自社に最適な形に進化させていきましょう。
リモートアクセスは、場所を選ばずに業務を遂行できるため、テレワークの実施には必須の技術です。働き方改革の推進やBCP対策など、これからもテレワークを利用する機会は増えるでしょう。そのため、リモートアクセスを実現する準備は進めなければなりません。
リモートアクセスにはいくつかの接続方式が存在し、それぞれに特徴があります。各方式の特徴を理解したうえで、コストやセキュリティを考え、自社に合ったものを選びましょう。
特にセキュリティ対策は重要です。リスクをゼロにすることはできないため、少しでも安全性の高い方法を選定しましょう。あまり手間をかけたくない場合は、セキュリティも確保しつつ容易に接続できるリモートアクセスツールの導入をおすすめします。
「CACHATTO One」は、PCやタブレット、スマートフォンなどの社外の端末から、社内のPCや業務リソースに安全にリモートアクセスできるサービスです。クラウド上の「CACHATTO Oneマネジメントポイント」を経由して簡単にリモートアクセスを利用できます。
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