アパレル界のトレンド・リーダーはスマートフォンも先進運用
BYOD(私物端末の業務利用)によりワークスタイル変革を実現
株式会社ユナイテッドアローズ様
- 卸売・小売
- 従業員数 1,001~5,000名
- CACHATTO SecureBrowser
- 事業支援本部 情報システム部 システムサポートチーム マネージャー
佐藤 弘明 氏
株式会社ユナイテッドアローズは、国内外からの仕入れブランドやオリジナル企画の衣料や小物などを販売するセレクトショップを、全国に全14ストアブランド、185店舗展開するファッション業界のトレンド・リーダーである。同社は、その営業活動においても先進的な取り組みを行っている。
2010年10月、iPhoneアプリによる「リアルタイム在庫検索システム」を店舗に配備。お客様の要望に対し、その場で即時に回答ができる環境を実現。さらに、2011年11月、同社の直営通販サイト「ユナイテッドアローズ オンラインストア」で取り扱う7ブランド5,000点超の豊富なファッションアイテムを、iPhone上で自由にコーディネートできるスタイリングシミュレーションアプリ「UA Style Share」をリリース。ユーザーは自分だけのコーディネートを楽しみ、そのままネット購入できるようになった。
普及が始まったばかりのスマートデバイスを積極的にビジネスに活用するその姿勢は、「私たちは、新しい『日本の生活文化の規範』となる価値観を創造し続ける集団です」という同社の企業理念を体現していると言えるだろう。
- 「UA Style Share」画面イメージ
BYODによる「ワークスタイルの変革」を通じた「新しい『日本の生活文化の規範』となる価値観の創造」
「2009年末にメールシステムの刷新をはじめた当時、一般社員がモバイルデバイスを利用するには事前の申請が必要であり、利用者もシステム部門も手軽に活用できませんでした。
そのため、外出時にはメールの確認のために、わざわざオフィスに戻ってくるという人も少なくありませんでした」
同社情報システム部マネージャー 佐藤氏は振り返る。
『ワークスタイルの変革』が必要なのでは。
佐藤氏ら情報システム部はこの状況を変革すべく、「携帯端末を活用したメール利用インフラの導入」を決断した。携帯端末は、"私物"のスマートフォン、携帯電話を前提とした。今、注目の「BYOD※1」である。2009年当時は「BYOD」という言葉は存在しなかった。文字通り「新しい『日本の生活文化の規範』となる価値観の創造」 である。前述の企業理念は情報システム部門のプロジェクトにおいても生きている。
- 事業支援本部 情報システム部
システムサポートチーム
マネージャー 佐藤 弘明 氏
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■企業/情報システム側
- ・コスト抑制(端末購入費、通信費)
- ・端末管理工数の削減(破損、故障、紛失、バージョンアップへの対応)
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■ユーザー側
- ・「私物」と「会社支給」の2個持ちをしなくてもよい
- ・自分の嗜好に合う端末を使える(会社から支給すると、古い端末を使い続けなければならない)
「BYOD」のセキュリティ要件:端末にデータを残さないこと
同社のモバイル環境におけるセキュリティの考え方について、佐藤氏にうかがった。
「現在、利用しているリモートアクセス環境は3種類あります」
「職性や業務形態を分析し、グループ分けを行いました。幹部クラスでは複合利用の人もいます。このように分類した理由は、『セキュリティ』と『ユーザビリティ』の両立に妥協したくなかったからです。
①のグループでは、私物端末からの利用であっても、CACHATTOの「端末内に閲覧データを残さない」仕様により、情報漏洩リスクが極小化できると判断しました。スマホのセキュリティと言えば、MDM(遠隔ロック、遠隔消去)が思い浮かびますが、それを私物端末に導入したとしても、有事の際の運用に疑問を感じました。端末に閲覧情報を残さないCACHATTOであればMDMに依存する必要がありません。CACHATTOがなければ「BYOD」は実現できなかったかもしれません。
②は自宅PCによる「BYOD」です。仮想リモートデスクトップにより、やはり情報を端末内に残しません。少人数の幹部が使用するインフラです。
③は、会社支給の端末(iPad)ですので、我々の判断でセキュリティソリューションを導入できます。そこでActiveSync(アクティブシンク)を採用しました。こちらは端末にデータが残りますが、パスワードの複雑化、ディスク暗号化、及び、キャリアのMDMサービスにより情報漏洩リスクに対処することにしました」
「BYOD」は、社員と会社との合意が重要
「BYOD」の採用に際し、悩まれている企業は多い。「セキュリティ」が課題となるのは当然のこと、「私物端末の業務利用」に際して労務面における課題もあるからである。同社においてはこの課題を払拭するために、情報システム部門と人事部門が連携し、十分な意見交換を行いながら本プロジェクトが進められた。これは、これから「BYOD」を目指す企業にとって非常に参考になる話であろう。
「私物端末の業務利用」という特殊な運用形態から生じる諸事項に対し、同社では社員と会社は誓約書による合意を行っている。佐藤氏から骨子をうかがうことができたので、以下にその一部を紹介する。
- ■「三位一体」でプロジェクトを推進
- ■労務に関する合意
- ・「私物端末の業務利用環境」は会社の強制ではなく、社員の希望により提供される。
- ・モバイル業務を実施した際の賃金の取り決めをする。 等
- ■運用(通信)費用に関する合意
- ・「私物端末の業務利用」の際の通信費は、ユーザーの個人負担とする。
- ・特殊運用(海外利用時のローミング等)により個人の費用負担金額が増加した場合の取り決めをする。 等
これらが決定された経緯を佐藤氏は次のように述べる。
「モバイル環境の整備に向けて、事前に人事部門と意見交換を重ねた結果、①の私物端末によるリモートアクセスを段階を踏んで導入検証を重ねるという結論に至りました。検証段階では実際に管理職に使っていただき、『労務管理云々の対象ではなく、ちょっとの合間に閲覧できる便利なツール、業務効率向上に役立つもの』と認識してもらえました。そこから、会社の強制ではなく個人の裁量に任せて、お互いにメリットを共有する、という考えのもとに前述の合意事項が決められたのです。
ちなみにそれ以外のリモートアクセスは『社内で行う業務と同等』と見なされ、管理職や特定の業務に限定すべしということになりました」
「ワークスタイルの変革」と「新しい生活文化の創造」への挑戦はまだまだ続く
「BYODの運用においては、不適合の端末が多くあっては困ります。現在では、様々な携帯端末が販売されていますが、CACHATTOは新機種への対応が『早い』のと『多い』のに助かっています。これまでに接続不良の問い合わせは1件もありません。
また、本番環境の立上げは2週間程度で済みました。これには、正直驚きました。こんなに短期間にカットオーバー出来たシステムはありません。まさに『カチャット』ですね」佐藤氏は当時を懐かしむ。
「ファイルサーバー閲覧機能がリリースされると聞きました。営業報告書などのファイルがスマートフォンで閲覧できるようになると大変便利です。SharePoint対応も期待しています。社員のモバイル業務環境をどんどんよいものにしたいのです。今後のCACHATTOの展開に期待しています」(佐藤氏)。
同社情報システム部門による「ワークスタイルの変革」と「新しい生活文化の創造」への挑戦はまだまだ終わらない。
株式会社ユナイテッドアローズ
セレクトショップとして路面店をはじめ、商業施設、百貨店、さらに2011年から駅ナカや空港、高速道路のサービスエリアなど新たなチャネルへの積極的な出店を行いながら、ネット通販などでも業績を順調に伸ばしている小売業である。
CSR(社会貢献活動)にも積極的に取り組み、東日本大震災チャリティプロジェクト"MOVING ON TOGETHER!" ではチャリティ商品販売、イベント開催を通じて売上の一部を寄付するなど、お客様とともに取り組む各種支援企画を行っている。
東証1部上場にて今期の売上げ予測も創業以来連結経常利益過去最高益の更新となる連結売上高101,272百万円、経常利益9,600百万円を見込んでいる(2012年3月期予想)。
本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前2-31-12 |
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従業員数 | 2,647名(2011年3月31日現在) |
売上高 | 90,571百万円(2011年3月期) |
URL | https://www.united-arrows.co.jp/ |