株式会社日本カストディ銀行様
旧 資産管理サービス信託銀行様

- インタビューにお答えいただいた担当者様:
- 資産管理サービス信託銀行株式会社
- IT・システム統括部
- 部長 金井 潤 氏
- 調査役 篠原 純一 氏
- 島田 岳人 氏
事例詳細
資産管理サービス信託銀行(SB)は、みずほフィナンシャルグループの資産管理専業信託銀行として、銀行や生命保険会社等の機関投資家の有価証券等を安全に管理する「資産管理業務」という金融インフラを担う業界のリーディングカンパニーである。近年、機関投資家のニーズは一層多様化、高度化しており、同社への資産管理業務に求められる役割期待や責任は年々増している。同社では1年に満たない短期間で「iPadを活用した、働き方改革を支える業務インフラ」の整備を実現したという。この業務インフラ整備の経緯についてプロジェクトを担当された同社IT・システム統括部に伺った。
トップダウンで「iPadを活用したモバイル業務インフラ」プロジェクトが始動
今回取材にご協力いただいたIT・システム統括部は、ITの企画業務やシステムリスク管理業務を担当しているが、あわせて社内共通のITインフラの整備も担当している。同部の金井部長はプロジェクト開始当時を振り返える。

「金融業という業種柄、情報セキュリティへの意識は高く、社外への情報の持ち出しは原則禁止としています。また、社外での業務と対比してオフィスでの紙による業務が多かったこともあり、社外での業務は想定していませんでした。故に、CACHATTO導入以前は情報端末などの配布もなく役員、部長席への会社携帯電話の支給に留まっていました」。「2016年6月、トップから『場所の制約を排除した効率的な仕事の仕方を実現するように』という指示があり、リモートアクセスインフラの選定に入りました。対象として、まず出張の多い上層部と外出の多い営業部門をターゲットにしました。彼らが社外からでもメールを確認できるようにすることで業務の効率を上げることがプロジェクトの目的でした」。
しかし、プロジェクトに与えられた期間は「上期中(2016年9月迄)に稼働」とされ、わずか3ヶ月であった。「グループの銀行企業がすでにCACHATTOを導入していることを知っていましたし、プロジェクトに与えられた時間が短かったこともあり、実績のあるCACHATTOを有力候補としてプロジェクトを進めました」。(金井氏)
モバイル業務の課題は「労務管理」
利用端末はセキュリティを考慮し、既にグループ標準とされていたiPadを選定し支給することを決定。その導入に向けての対応について篠原調査役は語る。
「導入にあたっての大きな課題の一つは『労務管理』でした。iPadを社外で使う場合、どこまでを業務とみなし、それをどのように管理するかが論点でした。人事部、事務統括部、法務・コンプライアンス部、IT・システム統括部が検討主体となり、事務ルールを作成しました。iPadを利用するユーザーにはこのルールに同意してもらい、誓約書を結ぶことにしました」。
「この運用に際し、利用者のCACHATTOの利用状況を把握し、各部署の管理職と共有できる仕組みを構築する必要がありました。それはCACHATTOのユーザー操作ログを活用することで可能にしました」。(金井氏)

誓約書の締結と同時に、iPad支給対象者へのiPadとCACHATTOの利用方法のレクチャーがIT・システム統括部により開始された。iPadの利用は初めての社員も多かったため、iPadの有効活用に向け丁寧な説明を重ねた。
そして2016年8月。プロジェクト開始から2か月という短期でのカットオーバーが実現した。利用開始後、さっそく利用者から歓迎の声が寄せられたという。篠原氏に当時の利用者の反響をお聞きする。
「CACHATTO導入以前は、営業は地方に出張に行った際もメールを確認することができず、内勤のスタッフにメールを確認してもらうこともあったそうです。CACHATTO導入によりその必要はなくなり、出張者、内勤のスタッフ、双方の負担を軽減することができました。また外出時もメールを確認するためにわざわざ帰社する必要がなくなり、そのまま退社できるようになりました」。「社長からも、外出時にいつでもメールがチェックできると喜んでもらえました」。
次のプロジェクトは「働き方改革」

iPadによるモバイル業務インフラ構築プロジェクトも一段落した2016年10月、新たなミッションが持ち上がった。この前月、内閣は長時間労働の是正や同一労働同一賃金の実現などを目指し「働き方改革実現推進室」を設置。政府の掛け声はもとより、グループ会社全体でも「働き方改革推進」が加速し、早速同社でも「働き方改革」の検討が進むこととなった。今回も稼動までの期間が短く、年度内(2017年3月迄)のカットオーバーを目指すこととなった。島田氏は新プロジェクトについて説明する。
「今回の目的は、育児のための時短勤務および終日在宅勤務をする社員への業務環境の提供でした。在宅勤務のための業務プラットフォームは情報セキュリティの観点から『VDI※1によるシンクライアント』を候補としました。端末は先に導入したiPadを活用することとし、そのための専用のキーボードを配布することにしました。また、社外からアクセスする情報を制限するために、社外業務用のクライアントからアクセスできるファイルサーバーのフォルダは限定することにしました」。

様々な工夫でプロジェクトの短期化に成功
ここで大きな課題に直面する。
「VPN※2をiPadから社内のVDIサーバーへ通す必要がありました。ネットワークインフラには幾つかのファイアウォールが存在し、それらにVPNトンネルを通すとなるとセキュリティ審査に多くの時間を要すことが予想され、半年後の納期に間に合いそうにありませんでした」。(島田氏)
島田氏はグループのITインフラの厳格なセキュリティへの対応とプロジェクト納期の狭間で悩んでいた。そんなある日のこと。
「たまたま眺めていたCACHATTOの製品情報サイトでSplashtop for CACHATTOが新製品としてリリースされたことを知りました。以前からSplashtopというリモートデスクトップ製品があることは知っていました。『CACHATTOと同じコンセプトで、リモートデスクトップできるのであれば行ける!』と考えました」島田氏は笑顔で当時を振り返る。
早速、篠原氏と島田氏は、e-Janネットワークスで開催された「Splashtop for CACHATTO発表セミナー」に参加。「セミナーの説明を聞いて、Splashtop for CACHATTOもCACHATTOと同様に外向きのHTTPSのみで利用できることが分かりました。ネットワークの設定のためには、これしかないと思いました」。(島田氏)
こうしてVDIへのアクセス手段としてSplashtop for CACHATTOの導入検討が開始された。
同社は、VDIサーバーのプラットフォームとしてハイパーコンバージドソリューションと呼ばれるNutanix※3を採用した。「VDIは高額、且つ導入工数が大きいというイメージがありますが、Nutanixの採用により双方を縮小し、プロジェクトの短期化を目指しました。また、今後の拡張性がある事もポイントになりました」。「ハイパーコンバージドの採用は当社では初めてであったことから、採用理由を何度も説明する必要がありました」と、新しいソリューションの採用の経緯と苦労を篠原氏は回想する。
実環境でのSplashtop for CACHATTOトライアルで、iPadから多層のファイアウォールを超えてNutanix上のVDIに見事アクセスできた時、島田氏は「行ける!」と確信したという。
2017年2月、冒頭のプロジェクトで導入されたCACHATTOにオプションであるSplashtop for CACHATTOが追加され、翌3月にプロジェクトは無事カットオーバーを迎えた。厳格なセキュリティポリシーが存在する中での新しい挑戦の末に「半年での在宅業務インフラ導入」は成し遂げられたのである。
そして導入当初50名程度であったCACHATTO利用者を、約1年を経て200名※4程度まで利用できる環境にしている。
更なる「働き方改革」を目指し
最後に、今後CACHATTOに期待されることを篠原氏にお聞きする。「iPadのキーボードが不便、との意見がユーザーから来ていましたが、iPad対応のJIS対応キーボードがリリースされるため、その点は解決の目途が立っています。しかしiPadからWindows PCを操作するのにマウスを使いたいという要望が出ています」。
早速、Splashtop for CACHATTOのiPad向けバージョンにおいて近日中にマウス対応予定とお伝えし、持参した専用のマウスをご覧いただいた。「普通のマウスよりも小ぶりで持ち運びに便利ですね!」と好評であった。
また、現在は1人1台の仮想端末を割り振る必要があるが、複数のユーザーを1台の端末で共有できる機能のご要望もいただいた。本機能についても対応を予定※5しており、今回のご要望に関しては近いうちに全て対応できることになる。
「今後も業務の効率化や従業員の様々なライフイベントに対応できる業務インフラを提供すべく、iPadを活用した様々なコミュニケーションツールを導入する予定です。CACHATTOの導入は『働き方改革』へのさらなる取り組みのへの足掛かりとなったと思います。」(金井氏)
厳格なセキュリティ体制を持つ金融系企業の故に、通常よりも困難とも思われた短期プロジェクトを成功させた今回の事例は、これから「働き方改革」を推進する多くの企業に勇気を与えるものとなるであろう。
お客様会社概要

資産管理サービス信託銀行(TCSB)は、機関投資家の財産(主に有価証券)管理に伴い発生する高度で複雑な手続きを担うみずほフィナンシャルグループの資産管理専業信託銀行。TCSBは、約385兆円と国内最大級の資産残高を有しており、日本国内のみならず世界各国の法律・税制・取引慣行など専門性の高い知識を駆使して、金融ビジネスを支えている。

会社名 | 資産管理サービス信託銀行株式会社 |
---|---|
本社所在地 | 東京都中央区晴海1丁目8番12号 晴海トリトンスクエア タワーZ |
設立 | 平成13年1月22日 |
事業内容 | 有価証券管理サービス、資産管理に係る各種付加価値サービス |
URL | https://www.custody.jp/ |