導入事例
「働き方改革」推進により得た業務効率化

- 執行役員 働き方改革推進室長 笹尾 佳子 氏
- 経営企画室 情報システム部 照井 健太 氏

日本国土開発株式会社は、1951年(昭和26年)に戦後の国土の「復興・開発」のため、土木工事の機械化を目的に設立された。その後の日本の高度成長と共に変革を重ね、今日の総合建設会社に至っている。現在は、浜名大橋橋梁補強工事を始めとする交通や港湾などの大規模開発から、プレサンスレジェンド堺筋本町タワーなどのマンションやレジャー施設の建設まで広く事業展開する一方、会社の原典である「復興」への貢献として、東日本大震災からの震災復興にも尽力している。さらに、豊かな社会づくりに貢献するという経営理念のもと、環境負荷の低減に向けた技術開発にも注力している。
同社では、従業員が「新しい価値を創造する業務」に取り組む時間を創出するために、「働き方改革」に積極的に取り組んでいるという。その狙いと背景、取り組みについて伺った。

テレワーク環境の全社導入
同社では2018年11月より本社・支店・現場を含む全社員を対象としたテレワーク制度が導入された。モバイルパソコンが社員に貸与され、希望者は上司の許可を得ることで週2日前後のテレワークが可能になっている。本テレワーク制度の全社解禁を目前にした2018年10月に同社にお伺いし、そのプロジェクトを推進されている働き方改革推進室 笹尾執行役員と経営企画室 情報システム部 照井氏にプロジェクトの背景と内容を伺った。

- 執行役員 働き方改革推進室長
笹尾 佳子 氏
「現在、テレワークは一部社員でSplashtop for CACHATTOを利用して試行しています。11月からはその他の社員にも全社的に社外から社内リソースにアクセス可能とする環境を提供し、テレワークを解禁します。全社が対象となりますので、本社で内勤している社員だけでなく、実際に工事現場で現場監督などを務めている社員にもこの環境は提供されます」(照井氏)
Splshtop for CACHATTOはCACHATTOのオプション機能のひとつで、CACHATTOの認証基盤で動作するセキュアなリモートデスクトップサービスである。同社では、テレワーク制度に向け、本機能で社外から社内のPCにアクセスできる環境を試行したのだ。
「テレワーク環境導入の目的は本社と現場で少し異なります。本社では、テレワーク環境導入によって業務効率化とマネジメント強化を図ります。それにより生み出された時間で、長時間労働が問題となりがちな現場へのサポートの時間を生み出すことが目的です。一方、現場では、全国の現場に勤務する社員が書類作成業務を自宅で実施可能とすることによって、移動時間を少なくし、すこしでも自宅で過ごす時間を増やし、ワークライフバランスの向上を目指します」(笹尾執行役員)
ダイバーシティ推進から働き方改革へ
このテレワークへの取り組みは同社が2016年から示している「ダイバーシティ方針」に基づく働き方改革の一部である。この方針は建設業界で今後さらに課題となるであろう人材の不足に対処すべく、同社社長が打ち出したものである。ダイバーシティ推進により、様々な人が働き続けられる「ダイバーシティを受容できる環境」を整えることで、質量両面からこの問題への対策を打つことが狙いだ。
まず質の面では、働き方改革による生産性向上と付加価値の創造を行う。少ない人員でも最大のパフォーマンスによって価値を創造し、他社との差別化を目指す。次に量の面では、働き方改革による職場環境の改善により新入社員の採用促進を図るとともに、現職の社員が出産、育児、介護などの様々なライフイベントの中でも継続して働ける環境を整える。
2016年に本方針が示されてしばらくの間は、同社の働き方改革はスローペースであったという。そこで翌2017年、働き方改革の実現にはトップ層の意識改革が必須との考えから、経営幹部向けの啓蒙活動を実施。改革への取り組みが加速したとのこと。その時外部から招いた講師が笹尾執行役員である。また、時を同じくして若手が集まりプロジェクトを編成、働き方改革に向けてテレワークについての検討が重ねられた。照井氏は、そのプロジェクトに参画していた。
Splashtop for CACHATTOを試験導入
照井氏らワークグループのメンバーは、そのころ世間でも話題になっていたテレワークによる働き方改革に目を付け、その実現性を模索した。その時、テレワークツールとして白羽の矢が立ったのが「Splashtop for CACHATTO」であった。
「社外からのメール、スケジュール閲覧のツールとしてCACHATTOを既に導入していたこともあり、テレワークのツールとしてSplashtop for CACHATTOを検討しました。CACHATTOのセキュリティコンセプトをそのままに、オプションとして簡単に導入できることも魅力的で、まずは(2017年)7月24日のテレワークデイでテスト的に使用してみることになりました」(照井氏)
テレワークデイまでのプロジェクトに与えられた期間と人員は限られたものであったが、Splashtop for CACHATTOの導入は非常に容易なため、テレワークデイ当日にはおよそ10名のスタッフがテレワークを試行することができた。
「テレワークデイ終了後も各メンバーは利用を継続しました。用途としては、情報システム部門の社員は社外からのメンテナンス業務。産休明けの社員は育児をしながらの在宅勤務。設計部門の社員は社外からのCADファイルの閲覧・作成などです。接続元には会社給付のタブレットだけでなく自宅の私物PCも利用を許可しています。特にCAD利用については、他社のリモートデスクトップソリューションを試した際には動きが鈍いと感じましたが、Splashtop for CACHATTOはパフォーマンスが非常に高く、特に2DのCADについてはストレスなく利用できていると現場からの報告を受けています。さらにスクリーンショット防止機能が付いている点もセキュリティ的に高評価です」(照井氏)

- 経営企画室 情報システム部
照井 健太 氏
働き方改革取り組みの本格化
働き方改革のさらなる社内浸透を目指し、2018年5月、笹尾執行役員を迎え「働き方改革推進室」が発足した。
「発足当初は女性の活躍をテーマにしようと考えていました。ですが各部署にヒアリングを実施するうちに、様々な他の問題も浮き彫りになりました。上司と部下の働き方改革に関するマネジメントや、従業員の高年齢化による健康の問題。長時間勤務の問題もその一つです」(笹尾執行役員)
折しもそのころ、照井氏は2回目のテレワークデイズに向けて、より大規模なテレワークの実施を目指していた。今回は大規模ということもあり、発足したばかりの働き方改革推進室や、総務、経営企画などの他部署を巻き込んでのプロジェクトとなった。
「大規模に実施するためには、ルールの策定とその認知が必要でした。今回は実施後アンケートもとり、全社的なテレワークの実現も視野に入れたテストケースを目指しました」(笹尾執行役員)
テレワークにあたり、労務管理等のルールを策定することはもちろんのこと、タスクの棚卸の方法や、上司への報告の方法についてのレクチャーも実施した。そして、2018年7月23日からの5日間、180名以上の社員がテレワークを実施することとなった。
テレワークへの反応
5日間のテレワーク試行後の現場の反応はどうであったか。利用者アンケートの結果についてお聞きする。
「反応は概ね好評でした。また実際に実施したことで、様々な具体的な課題も浮き彫りになってきました。特にこれらの意見が多く寄せられました」(照井氏)
- テレワーク向きの仕事と、そうでない仕事の仕分けを明確にする必要がある
- ペーパレス化が進んでいない業務についてはテレワークが実施できない
- PCのスペックや複数のディスプレイを必要とする業務では、私物端末だけでは不十分
- 上司と部下の評価フロー、連携フローに改良が必要
- テレワーク時の成果を測ることが難しい
「これらの課題を解決することは、『全社』テレワーク環境の実現だけでなく、業務の効率化にもつながります。テレワークを実施したいと思っている社員は多いですから、テレワークを目的として、業務の効率化を図ることが今回の取り組みの一番のメリットなのではと考えています」(笹尾執行役員)
働き方改革推進室ではこの結果を受け、11月の全社テレワーク解禁を目指して全社に課題解決のための教育を行うキャラバンを実施した。
今後の展開
「テレワーク実施というプロジェクトを通じて、業務の効率化が実現できるということがわかりました。今後はその取り組みを広めていくとともに、テレワーク環境を改善することで、会社全体でさらなる効果も出てくると思います。例えば社員の中には、親の介護に直面する者も多くいます。そうした時に会社を辞めるという選択をせず、働き続けられることは、会社にとっても社員にとっても望ましいことです」(笹尾執行役員)「ツールの面では、私物端末の活用が求められる場面や、大容量ファイルを使用する場面では、画面転送型で端末にデータを残さないSplashtop for CACHATTOを活用しようと思っています」(照井氏)
同社の働き方改革への取り組みは始まったばかりではあるが、その取り組みを語るお二人の目には、これらの取り組みを通じて社会に新たな価値を提供する「強く、優良な企業」となった未来の姿が見えているようであった。
日本国土開発株式会社
日本国土開発は1951年に戦後の国土の復興・開発のために設立された。現在では豊富な実績と確かな技術で、交通や港湾などの大規模開発からレジャー施設、住宅建設まで広く事業展開している。地盤・基礎やコンクリート関連技術などの「土木技術」、超高層建築や免震など快適環境をつくる「建築技術」についても国内外において高い評価を獲得。特に環境配慮した工法の確立などを積極的に行い、社会に広く貢献する企業として確実に歩を進めている。


本社所在地 | 東京都港区赤坂四丁目9番9号 |
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資本金 | 50億円 |
創業 | 昭和26年(1951年)4月10日 |
事業内容 | 電源、交通、港湾、治山、治水、潅漑、干拓、地下資源の開発その他国土の開発に関する業務 |
従業員数 | 1,002名(平成30年5月現在) |
URL | https://www.n-kokudo.co.jp/ |